いつかの君と握手
ぼんやりしていると、前の琴音から『旅のしおり』なるベタなプリント冊子が回ってきた。
すげえ、こんなのまであんの。
思わずにやにやしながら残りを後ろに回し、さっそくぺらぺらと捲った。
旅行って響きは校内イベントだとしても、ついわくわくしてしまうんだけど、 でも今回は微妙に気分がのらないんだよねー。日にちがねー。
12日、木曜日は鳴沢様の放映日なんだよね。
録画して行くつもりだけど、でもやっぱりリアルタイムで見たいのー。
四代目が嫌だからって、見ないという選択肢はないのだ。
じいちゃんと一緒にお菓子食べながら見るのが、至福なのにー。
こんなこと琴音に言ったら完全に呆れられるだろうから、言わないけどさ。
「じゃあ、班決めしまーす。とりあえず、適当に6人ずつ分かれてみて。あ、今回は親睦が目的なので、必ず男女混合にしてください」
教壇に立つ、学級委員の田中くんが声を張り上げた。
田中くんは涼やかな眼差しが素敵な、理知的な男の子だ。
背も高く、顔もなかなかに整っている素敵メンズ。
声が少し高めなのが残念なところなんだけど。いや、欠点もまた魅力というべきなのか。
少し鼻にかかった声は耳触りがいいと言う子もいるらしいし。
「ミャオちゃん。悠美ちゃんと神楽ちゃんも一緒にいいよね?」
「へ? ああ、もちろん。よろしくね」
田中くんを見ていた僅かな時間で、メンバーが増えたらしい。
二人は確か中学からの仲良しとか言ってたっけ。
手芸部に一緒に入ってて、羊毛フェルトとやらで可愛いマスコットをよく作っている。綿を針のようなものでちくちく刺して、動物なんかを形作っていくのだが、その工程がまるで手品のようで、見ているだけで楽しい。
この間など、小一時間ほどで赤いネコを作ってくれ(好意からというのは十分伝わったので、良しだ。しかもかわいいし)、それは携帯のストラップとしてつけている。
琴音の席に集まった二人に、にこりと笑って見せた。
「後は、男の子を入れなくちゃいけないんだよねえ。どうする? 二人とも」
「えー。どっかに二人組の男子いない?」
「男女混合ってめんどくさいよねー」
残りのメンバーのことは、3人に任せとこ。
手元のしおりに視線を落として、内容を確認することにした。
あ。学校じゃなくて駅に集合なんだ。
ふむふむ。私服でいいのね。
動きやすい、華美でない服装のこと。アクセサリーなどは禁止、か。
ジーンズにTシャツでいっか。
スニーカーもいるのかー。新しく買おうかなあ。
じいちゃんにお小遣いもらおうっと。
「なあ、俺もここに入っていい?」
お。男子の自己申告者が現れたようだ。あぶれたのかな。
「え!? い、いいけど、いいの?」
なんだそれ。琴音が何やら動揺してる。
申告者は一体ダレよ? と顔を上げてみて、唖然とした。
そこには仏頂面の大澤がいたのだ。
「いいの? って、こっちが訊いてるんだけど。じゃあ、いいんだな、柘植?」
「え? ああ、ええと、その」
琴音がちらりとあたしを見た。
どうしますか!? と瞳が訴えている。
「いいよ! 全っ然いいに決まってるし! よろしくね、大澤くん!」
すげえ、こんなのまであんの。
思わずにやにやしながら残りを後ろに回し、さっそくぺらぺらと捲った。
旅行って響きは校内イベントだとしても、ついわくわくしてしまうんだけど、 でも今回は微妙に気分がのらないんだよねー。日にちがねー。
12日、木曜日は鳴沢様の放映日なんだよね。
録画して行くつもりだけど、でもやっぱりリアルタイムで見たいのー。
四代目が嫌だからって、見ないという選択肢はないのだ。
じいちゃんと一緒にお菓子食べながら見るのが、至福なのにー。
こんなこと琴音に言ったら完全に呆れられるだろうから、言わないけどさ。
「じゃあ、班決めしまーす。とりあえず、適当に6人ずつ分かれてみて。あ、今回は親睦が目的なので、必ず男女混合にしてください」
教壇に立つ、学級委員の田中くんが声を張り上げた。
田中くんは涼やかな眼差しが素敵な、理知的な男の子だ。
背も高く、顔もなかなかに整っている素敵メンズ。
声が少し高めなのが残念なところなんだけど。いや、欠点もまた魅力というべきなのか。
少し鼻にかかった声は耳触りがいいと言う子もいるらしいし。
「ミャオちゃん。悠美ちゃんと神楽ちゃんも一緒にいいよね?」
「へ? ああ、もちろん。よろしくね」
田中くんを見ていた僅かな時間で、メンバーが増えたらしい。
二人は確か中学からの仲良しとか言ってたっけ。
手芸部に一緒に入ってて、羊毛フェルトとやらで可愛いマスコットをよく作っている。綿を針のようなものでちくちく刺して、動物なんかを形作っていくのだが、その工程がまるで手品のようで、見ているだけで楽しい。
この間など、小一時間ほどで赤いネコを作ってくれ(好意からというのは十分伝わったので、良しだ。しかもかわいいし)、それは携帯のストラップとしてつけている。
琴音の席に集まった二人に、にこりと笑って見せた。
「後は、男の子を入れなくちゃいけないんだよねえ。どうする? 二人とも」
「えー。どっかに二人組の男子いない?」
「男女混合ってめんどくさいよねー」
残りのメンバーのことは、3人に任せとこ。
手元のしおりに視線を落として、内容を確認することにした。
あ。学校じゃなくて駅に集合なんだ。
ふむふむ。私服でいいのね。
動きやすい、華美でない服装のこと。アクセサリーなどは禁止、か。
ジーンズにTシャツでいっか。
スニーカーもいるのかー。新しく買おうかなあ。
じいちゃんにお小遣いもらおうっと。
「なあ、俺もここに入っていい?」
お。男子の自己申告者が現れたようだ。あぶれたのかな。
「え!? い、いいけど、いいの?」
なんだそれ。琴音が何やら動揺してる。
申告者は一体ダレよ? と顔を上げてみて、唖然とした。
そこには仏頂面の大澤がいたのだ。
「いいの? って、こっちが訊いてるんだけど。じゃあ、いいんだな、柘植?」
「え? ああ、ええと、その」
琴音がちらりとあたしを見た。
どうしますか!? と瞳が訴えている。
「いいよ! 全っ然いいに決まってるし! よろしくね、大澤くん!」