Raindrop~Mikoto side
再び演奏を始め、中間部分の不安を通り過ぎると、今度はまた静かな雨音へ変化した。

すうっと力の抜ける身体は、優しい雨音の下で、穏やかな音の波に揺られる。

ちらりと覗き見る和音くんの顔は、その雨音に打たれて穏やかになっていた。

私の視線に気づいた彼は、私に向かって極上の笑みを向け、軽く頭を下げた。

──ああ、きっと、分かってくれたんだ。

そのことが私をも笑顔にする。


それから何度か合わせてみたけれど、和音くんの音はいい感じに力が抜けていた。

何より、楽しそうだ。

彼も、彼の音も。



……私も。

楽しんで音を奏でるなんて久々のことかもしれない。

いつもいつも、冷たい雨の中にいた。

だけど今日は。

温かい雨の中で、私も一緒に笑っている。


焦らずに、良く周りを見ればいい。

ひとりで弾いているわけじゃない。必ず誰かが見守ってくれている。

楽しんで弾けばいい。

楽しんで生きればいい。


教えているつもりで教えられていることに気づいて、私はまた彼らに感謝した。

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