Raindrop~Mikoto side
3兄弟の合同練習の後、『ラ・カンパネラ』を弾いた和音くんの演奏は、それは素晴らしいものだった。
やっぱり、この子にはもう私が教えることなんてないんじゃないかしら──。
そんな風に少しだけ嫉妬して、寂しくなって。
でも、コンクールまでの数日で更に進化を遂げる和音くんの演奏を聴いているのは心地よかった。
教え子の成長が嬉しいと思うのも、本当だ。
「これは明日のコンクールが楽しみね」
予選のときはお友達と揉めていたようだったけれど、この演奏を聴いたらあの子達も何も言えなくなるわね。
もしかしたらプロデビューの話も来るかもしれない。
ふふふ、と笑いながら帰って来た夕方。
汗を拭き吹きエアコンのスイッチを入れて、バッグをベッドの上に放り投げる。
それからマンションのエントランスにある郵便受けから取ってきた手紙の確認をして……。
笑顔が固まった。