Raindrop~Mikoto side
相変わらずの一方的な押し付け。

それは以前この書斎で会社のために結婚をしろと言われたときと、変わっていない。

でも同じようには聞こえなかった。

……なんだろう。

腑に落ちずに立ち尽くしていると、きい、と革張りの椅子が僅かに回転した。

皺の刻み込まれた父の横顔が、少しだけ見えた。

「なにか不満か」

「……いいえ」

今更、不満など。

少しだけこちらを向いた父の視線は、すぐに明後日の方向へ向けられた。

「あるはずもないな。ヴァイオリンさえ弾いていれば、お前は幸せなのだろう」

「……え?」

問い返すと、また椅子が周り、背を向けられた。

「お前は昔から……ヴァイオリンを弾いているときが一番楽しそうだ」


どくり、と心臓が鈍く動いた。

なに……。

なにを、言ったの?

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