Raindrop~Mikoto side
「え……豆、は?」

コーヒーメーカーはあるクセに、使っていないものだから豆も用意していなかったはずなのに。

「これは家から持ってきました」

「……えっ!?」

和音くんの言葉に驚くも、更に驚きのものがキッチンには溢れ返っていた。

使った回数は片手で足りるくらいのオーブンの上に丸いパン、カウンターの隅にはフルーツの入ったバスケット。

同じく使った回数は片手で足りるくらいのクッキングヒーターの上には、鍋がみっつ。

コーヒーメーカーをセットした和音くんは、そのうちのひとつの蓋を開けた。

「お味噌汁くらいは飲めそうですか? それとも何か他のものを作りましょうか?」

その提案に、私はただ、ぽかんと口を開けて間抜けな顔をするばかり。

「あ、あの……ええと……こ、これは?」

「冷蔵庫に何も入っていなかったので、色々と、作ってみたんですが」

勝手にすみませんと謝り、私に微笑みかける和音くん。

ああ、そういえばさっきそう言われたっけ……とぼんやりと思い出す。

衝撃的な出来事ばかりですっかり頭の中から飛んでいたわ……。

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