Raindrop~Mikoto side
「……水琴さん?」

「なぁに?」

改まった声で話しかけられたので、私も背筋を伸ばす。

「昨日の記憶は本当にないんですか?」

「え……ええ、ごめんなさい……情けないことに……和音くんとどこでどうやって会ったのか、全然思い出せないの……」

肩を窄めて小さくなると、和音くんは私の顔をまじまじと眺めた後、哀しげに眉を潜めた。

「水琴さん」

「は、はい」

「お願いですから、記憶がなくなるほどお酒を飲むのは止めてください。たまたま居合わせたのが僕だったから良かったですけれど、他の人だったらどうしたんですか。……尊敬する先生がそんな危険な目に遭うのは、僕には耐えられません。今回は怪我もなさいましたし、身体にも良くありませんよ。ですからどうか飲み過ぎには気をつけて。自分の身体をご自愛くださいね……」


ぐさっ。

ぐさぐさっ、と。

和音くんの労わりの言葉が胸に突き刺さった。


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