Raindrop~Mikoto side

それからは週に1回、橘家でヴァイオリンレッスンをした後、私の部屋で料理教室を開くのが決まりになった。

本当は、拓斗くんや花音ちゃんも誘って、ワイワイやった方が楽しかったのかもしれない。

でも……。

私のこの料理オンチを、あのかわいい子たちに知られるのは耐えられなかった。

卵はまともに割れないし、包丁で食物を同じ大きさに切ることも出来ない。

焼けば焦がすし煮れば吹き溢すし、分量は間違えるし、入れるものも間違えるし。

先日はレモンを絞ってあたり一面に汁を飛ばしてしまい、私も和音くんも爽やかな香りに包まれてしまった。

しかも種が飛んで額に当たるというミラクル。

そんな失敗をするたびに恥ずかしいし、あの日アキちゃんと飲んで記憶がなくなったことまでフラッシュバックしてきて、白目になって倒れそうになるのだけれど。

和音くんはいつも笑ってくれるから。

これでもいいのかなって、思ってしまう。

……いえ、全然駄目なのは分かっているのだけれど。

でもなんだか。彼といると変に力を入れなくて済んだ。

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