Raindrop~Mikoto side
こうして改まって天才少年の前で披露するのは緊張するけれど。

しっかり、やるわ。

「『斎賀水琴』のリサイタルにようこそ。今日は貴方の聴きたい曲をリクエストして頂戴ね。何でも弾くわ」

「……弾いてくださるんですか?」

「ええ」

和音くんは少し考え込んでから。

「『ヴォカリーズ』を」

と、今練習している曲をリクエストしてきた。

その後、

「歌いながら」

悪戯っぽくそう言うものだから。

「和音くんも一緒に歌ってくれるのならいいわよ?」

と返した。

『ヴォカリーズ』は実際に歌いながら練習していたのだけれど、和音くんは歌うことに慣れていないようで、珍しく恥ずかしがる姿が見れていた。

そんな彼に歌うことを強要するのは少し意地悪だ。

和音くんは少しだけ肩を竦めて首を振った。


ふふ、やっぱりね。

クスリと笑みを零しながら、ラフマニノフ作曲の『ヴォカリーズ』を弾く。

丁寧に、丁寧に。

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