Raindrop~Mikoto side
弾き終えると拍手が鳴り、それから次々にリクエストを出された。

クリスマスということもあって、パッヘルベルの『カノン』、シューベルトの『アヴェ・マリア』など。

それから、サラ・サーテの『カルメン幻想曲』、ラヴェルの『ツィガーヌ』などの超絶技巧曲も。

伴奏なしは誤魔化しがきかないから辛い。

……まあ、和音くんのように耳のいい子には、誤魔化しは通用しないだろうから。

プロの意地として、彼の師として。

和音くんが満足出来るような演奏を、私の持てるだけの力を持って響かせた。


ソロコンサートでも目玉として演奏したヴィターリの『シャコンヌ』は、我ながら上出来だった。

この狭い部屋の中では、ホールで聴くほど音は響かないけれど。

それでも。

「どう?」

感想を求めると、和音くんは目を細めて微笑んだ。

「……さすがです」

天才少年に褒められると、ちょっと嬉しい。

ほっとしてヴァイオリンを肩から下ろすと、喉の渇きに気づいた。

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