Raindrop~Mikoto side
売っているものだと言われても信じるくらいだけど、和音くんが持ってきたものだから、きっと。

「和音くんが作ったの?」

「ええ、まあ……」

やっぱり。

クリスマスだから、気を利かせてくれたんだ。

「私のために?」

「そのつもりでしたが、でも……」

チラリ、とテーブルの上にある、もこもことチョコクリームの乗ったブッシュ・ド・ノエルに行く視線。

もこもこになってしまったのは、うまく切り株の模様がつけられなくて、泡立てたクリームを全部乗せて誤魔化した結果だ。

それに比べて、凹凸のまったくない本当に美しいラインの白いケーキ。

……この出来栄えの差は、一体。

落ち込み気味な私に、そのケーキは持ち帰りますと目で訴えてくる和音くん。

「え、ちゃんと頂くわよ? 和音くんが作ってくれたのですもの」

「ひとりで食べるつもりですか?」

「ええ。その代わり、和音くんには私の不味いケーキを食べてもらうわ」

5号サイズはありそうなワンホールケーキをひとりで、というのはちょっと自棄気味だけれど。

私へのプレゼントだもの。きちんと頂くわ。

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