Raindrop~Mikoto side
少し熱を持っている彼の頬に手を沿え、顔を覗き込むと。

長い睫毛がゆっくりと上がり、艶のある漆黒の瞳が私を捉えた。

「ごめんなさい和音くん、お酒のせいよね? 待っていて、今……」

私の方へ倒れてきた体を受け止め、支えながら話を続ける。

「西坂さんを呼ぶからっ……」

携帯はどこへ置いたっけと視線を走らせていると。

「……い、で」

耳元で、何か囁く声がした。

「え? なに? 気持ち悪いの? 遠慮しないで大丈夫よ……」

そう言って背中を撫でたら、私の背中に回された和音くんの腕に、ぎゅっと力が篭った。

「なか…な…い、で」

「……え?」

耳を澄ませ、良く言葉を聞き取ろうとしたら。

その耳朶に、冷たくて柔らかいものが触れて、ビクリと肩が跳ねた。

「か、和音、くん?」

何か変だ。

そう思っていると、耳朶に触れていた和音くんの唇が、滑るように頬へ移動してきた。

「……ま! 待って和音くん、間違えてる! 間違えてるわ! 私は貴方の彼女さんじゃないわよ!? 目を覚ましてっ……!」

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