Raindrop~Mikoto side
手持ち無沙汰になった私は、あまりにも広い部屋を見渡しては小さく息をつく。

リビング、ダイニングのついたスイートルーム。

最高級の調度品の並ぶこの部屋に、10日は滞在すると聞いている。

さすがは一条の御曹司……と思っていると、ようやく電話が終わったようだ。

「ああ、やっと片付いた。ごめんね、待たせてしまって」

「いいえ。お忙しいようですね」

「いないときに限ってトラブルが起こるものでね。もう大丈夫だから、これからは落ち着いて会話が出来ると思うよ」

携帯を折りたたんでズボンのポケットにしまいながら、一条隆明は私に手を差し出した。

「ご挨拶が遅れました。一条隆明です」

それに私もソファから立ち上がり、手を差し出した。

「初めまして。斎賀水琴です」

軽く握手を交わし、手を引こうとすると。

ぐっと、その手を掴まれた。

見上げると、精悍な顔つきを柔らかくして、一条隆明が微笑んでいた。

「写真で見るよりずっと綺麗だね。やっぱり君にして良かった」

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