Raindrop~Mikoto side
「“あれ”が貴女にとって大したことではないのなら、今、同じことをしても許していただけるのでしょうか」

「な、何を言っているの……からかっているのね?」

「からかってなんかいませんよ。あのときも、今も……僕は本気です」

真っ直ぐな瞳。

真っ直ぐにぶつけられる想い。


──駄目


頭の中に響く警鐘に従い、和音くんの手の反対側へすり抜けようとしたのだけれど、そちらも右手で塞がれてしまった。

完全に囲まれて、もう逃げられない。

「……冗談はやめて」

「どうして冗談だと?」

「だって、私は先生よ? こんな年上の……貴方から見ればおばさんじゃない……こんな風に大人をからかって、遊びたい年頃なのよ。そうよね?」

「僕はそんな風に見えますか」

「そ、そうじゃ、ないけど……」

どうしたら逃がしてもらえるだろう。

だってこのままでは。


和音くんの目に耐えられなくて、俯いた。

けれども私の頬に添えられる彼の手に、顔を上げさせられてしまう。

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