Raindrop~Mikoto side
ああ、でも、参考書の中身が頭に入ってこない。

6年生の算数って、こんなに難しかったかしら。

それとも単に眠いからなのかしら。

夕方からは和音くんや拓斗くんにヴァイオリンの指導もしないといけないし。

コンビニで眠気覚ましのドリンクを買わないと駄目かも……。


なんて考えているうちに、どうやら眠ってしまったようで。

気がついたら駅をふたつほど通り過ぎていて、慌てて乗り換えて戻って、橘家に到着する頃にはぐったりしてしまっていた。



自分の頬をべしべしと叩き、気合いを入れて橘家を訪問する。

花音ちゃん専属執事、南原さんに案内されてレッスン室兼花音ちゃんの勉強部屋を訪れると、小さな女の子がもじもじしながら出迎えてくれた。

内向的で人見知りが激しいとは聞いているけれど。

なかなかどうして、このもじもじ加減がかわいい。

ちらっと私を見上げる大きな黒目を見ていると、思わず頭を撫でたくなってしまう。

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