Raindrop~Mikoto side
指や肩、体にも負担がかかって疲れているのかもしれない。でも、多分一番の原因は、“駄目”なまま弾き続けたことだ。

良いイメージを抱けないまま弾いていると、悪い弾き方が身についてしまう。

このまま弾かせるわけにはいかない──。


「和音くん、深呼吸しましょう」

「え?」

急な提案に、和音くんは少し驚いたように目を見開く。

「はい、まずは静かに息を吐き出して」

戸惑う和音くんを促して、無理やりに深呼吸をさせる。

何度かやっているうちに、顔色が良くなってきたみたい。

「それじゃあ、もう一度。あまり力を入れずに──」

逆らわずに、言う通りにはしてくれたおかげか、若干音が柔らかくなった。

やっぱり。

体の疲労というよりは、心の疲労。

“鐘”を鳴らしたくて焦っているのか、それとも別な何かか……そこまでは分からないけれど、とにかく和音くんは自分の音を見失っているようだ。

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