Raindrop~Mikoto side
雨が降る。

冷たい雨が降る。

その中であの人が私に背を向ける。

行かないで、と。

駄目だと分かっているのに行かないで、と追いすがる私の愚かさに。

更に激しい雨が降る。





翌日、重苦しさを払拭出来ないまま橘家へ向かった私だったけれど、花音ちゃんの愛らしさと拓斗くんの素直さにみるみる癒されて、穏やかなレッスン時間を過ごすことが出来た。

ああ、やっぱりいいな、この兄妹。

そう思いながら……問題の和音くんの番。


相変わらず、嫉妬しそうになるほどのテクニック。ここ数日基礎ばかりをやっていたせいもあるのか、更に磨きがかかっている。

それでも……。

それでも、たぶん。

和音くんが望んでいるような鐘の音にはなっていない。

何か突破口は……この状態から抜け出せる糸口はないものかしら……。


一通り弾き終えた和音くんは、弓を下ろすと、何か言いたそうに、けれど言っても良いものかと躊躇うように視線を彷徨わせていた。

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