Raindrop~Mikoto side
「んー……私はここで待っているから。見てきて」

笑顔が引きつっているかもしれない。

花音ちゃん、ごめんなさい。

でも私は、遠くから眺めているだけで精一杯なの。

「ええ~」

残念そうに顔を歪めた花音ちゃんは、近くにいた拓斗くんの手を取って、しあわせそうな花嫁たちの見学に飛んでいった。


黒いタキシード姿の新郎が、ここからでも勇人さんだと解る。

彼の笑顔が心臓を抉る。

ああ、逃げたい。……遠くからでも、辛い。

「和音くんも見てきたら?」

今の私は、きっと作り笑いも出来ない。そんな情けない顔を彼らに見せたくなかった。

でも和音くんは私を見ることなく、青い尖塔の鐘を見ていた。

「え、いえ……僕はここで」

鐘の音を聞いています。

……そんな風に聞こえた。


そんな和音くんに、少しだけ胸の音が落ち着いた。

──そう、そうよね。貴方は私に付き合って、結婚式を見に来たわけではないのだものね。

この鐘の音を、聴きにきたのだから。

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