Raindrop~Mikoto side
私は、先生。

和音くんの、先生。

迷いの中にある彼を、前に導いてあげないといけない。


ふう、と一息ついて、顔を上げた。そうして、和音くんの隣に並ぶ。


「和音くんが響かせたいのは、どんな鐘の音?」

高い音を鳴らす鐘を見上げながら、訊ねる。

「ラ・カンパネラ……小さな鐘、という意味だけれど、鈴も風鈴も、ハンドベルのような音も、すべてカンパネラ。ギトリスのような荘厳な鐘の音も、あの教会の鐘も、ね。……和音くんは、どんな音を鳴らしたいの?」

和音くんはゆっくりとした動きで鐘から私へ視線を転じた。

それからまたゆっくりと、鐘を見上げた。


──あんな風に、人々を祝福するような鐘の音?


和音くんは、そんな風に言いたそうな顔をしていた。

それなら。

「じゃあその鐘の音は、どんな人に聴かせたいの? 鐘が鳴っても、誰にも届かないのでは意味がないわ。貴方が届けたいと願わなければ、誰にも聞こえないの」

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