Raindrop~Mikoto side
和音くんは再び私を見て。

そうして、階段を下りていくしあわせな2人と、その2人を祝福する鐘の音に耳を傾けた。

──何か、掴めたかしら。

しばらく無言になる和音くんの横顔に笑みを向けると、彼もこちらを向いた。

「水琴さん……」

そう、和音くんが口を開いたところで。

「水琴?」

別の声が介入してきた。


心臓が、止まるかと思った。

恐る恐る声の主を振り返る。

黒いタキシードを着た、スラリと背の高い新郎が──私の愛した人が、微かに目を見開いてこちらを見ていた。

観光客によって出来ていた人垣が崩れて、私と彼との間にはなんの隔たりもなくなっていた。


遠くから眺めて、ただ、そっと別れを告げられればいいと思っていたのに。

人がまばらになったとはいえ、親族や友人たちに囲まれた彼と私との距離は20メートルは離れていたのに。

どうして、気づいたの。


「っ……」

声が、出ない。

足も動かない。

情けないことに、どうしたら良いのか分からなかった。

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