Raindrop~Mikoto side
勇人さんの驚いたような顔が僅かに苦しげに歪むのが見えて、更に息が詰まった。

身を後ろに退いて、逃げようと思った。

けれど。

視界の中に入ってきた白いウェディングドレスの綺麗な女性が、きょとんしとした顔で私を見ているのに気づいて。

ほんの少しだけ、膨らんだお腹が。

しあわせの象徴でもあるその丸みが。

ギリギリのところで私を『いい人』でいさせてくれた。──ここで逃げたら、駄目だ。


笑みを。

笑みを、贈ろう。

あの人“たち”に罪はない。変な心配もさせたくない。

そうしてこの気持ちに決別を。もう振り返らない明日を生きるんだ。


だけど上手く笑えない。

喉がジリジリして、真夏だというのに指先まで冷たくなってしまって。ガチガチになって、動けない。

どうしよう。

どうしよう……


──誰か、たすけて



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