Raindrop~Mikoto side
「あれぇ、水琴せんせーの知ってる人ー?」

水の中で溺れ、もがき苦しんでいるようなところへ、まさに天の助けが来てくれた。

花音ちゃんのかわいらしい声が、私を『大人な先生』に、一瞬だけ戻してくれた。

「ええ、お友達なの。だから鐘が鳴る時間も知ってて……」

純粋無垢な、私のかわいい生徒たちに微笑みを。

花音ちゃんへ、拓斗くんへ、そして和音くんへ。

ちらりと視線をやってから、勇人さんに視線を向けた。

──大丈夫。

この子たちの前では、私は笑っていられる。しっかりした大人でいられる。

ぎゅっと拳を握りしめて、最大級の笑みを浮かべて。

「おめでとう」

祝福と別れの言葉を、彼に。


勇人さんは笑った。

どこか哀しげには見えたけれど。笑って、私の精一杯の別れの言葉を受け止めてくれた。


これで、終わり。

すべて、終わったんだ。

そう思ったら、全身から力が抜けていってしまって、そこからまったく動けなくなってしまった。

早くここから立ち去りたいのに……彼と交わす視線から逃れたいのに。

一歩でも動いたら、足元から崩れ落ちていきそうだ。

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