Raindrop~Mikoto side
そんな情けない私の前に、すっと影が立ち塞がる。

「……失礼します」

そう言う和音くんの声とともに、ぎゅっと固く握った私の拳が、ひやりと冷たい手に包み込まれた。

何が起きているのか把握出来ない。

ただ、私の目の前には和音くんの頭があった。

私と勇人さんの視線を遮る位置に立った和音くんは、勇人さんに向かって軽く頭を下げた。

強い日差しに煌く黒髪がさらりと揺れるのを、ただ瞬きをしながら見る私。

「……和音くん?」

どうしたの、と。

疑問が湧き上がるのだけれど。真っ白になった頭ではなにも考えられず、ただ、瞬きを繰り返すだけ。


たぶん、そんなに長い時間ではなかった。

ぼんやりと眺めているからか、やけに長く感じられたけれど。


スローモーションのように流れる時間から、和音くんが手を引いて連れ出してくれた。

和音くんの冷たい手は私のぎゅっと握り締めた拳を解きほぐし、指先だけを軽く絡ませながら引っ張っていく。

それでまったく動けなかったはずの足は、魔法が解けたみたいにするっと動き出した。

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