ケータイ小説 『肌』 著:マサキ
私達は、駅前のビジネスホテルに入った。
こんなことでもなければ、来ることはなかっただろう。
通された部屋には、ベッドとデスクしかない。
狭く圧迫感がある室内も、私達の想いを熱くとけあわせる勢いとなった。
マサキにゆっくり押し倒される形で、私は背中からベッドに寝そべる。
絡まる指先。
シーツにこすれる髪。
高鳴る鼓動。
淫らな息遣い。
私のすべてが、マサキを求めている。
好きな人とのセックスは大事。
そう言ったアサミの気持ちも、少し分かった。
長い間、私はそういう感性を無くしていたんだと思う。
まるで、私の心を見透かしたみたいに、マサキの口づけは激しさを増していく。
夢のように幸せなこの瞬間、サクと体の関係を持ってしまったことを深く後悔した。
サクとはキスをしなかった理由も分かった。
私の中で、キスはエッチより重要性がある。
好きな人とはキスだけで満たされるし、むしろ、ただそばにいるだけでいい。
その延長線上にセックスがあるだけ。
体なんて、交わらなくたってかまわない。
サクとキスをしなかったのは、性欲を満たして心を満たしたと勘違いしていたかったから。
心を満たすために、サクのキスでは役不足だったということ……。
アサミは、サクが私を利用してると言い怒っていたけど、彼を利用していたのは私の方だった。
サクが、私に恋愛感情を持っていなくて本当に良かったと思う。