ケータイ小説 『肌』 著:マサキ
事故のあった交差点。
マサキは青信号で横断歩道を渡っていた。
なぜ、正しいことをしていたのに悪く言われなくてはならないのか。
加害者女性の言葉は、理解に苦しんだ。
普段、他人に対してあまり「ムカつく」と思わない私ですら、そのことには心底腹が立ったし、初めて人に殺意を覚えた瞬間でもあった。
マサキは無事に生きていてくれたので、殺したいくらい憎まずには済んだけれど。
お見舞いに行くと、マサキの下半身には掛け布団がかけられていて、その下がどんな状態だったかなど、想像もしていなかった。
骨折した片手を見せてはにかみ、
「毎日牛乳飲んでんのに、初めてホネ折ったわ!
車の力はすげえなー」
と、武勇伝でも語るかのように明るく振る舞っていたマサキ。
私や、マサキの家族も、そんな彼の笑顔に安心感を覚えていたんだ……。
私の知っていることから考えてみても、マサキが後遺症を持つに至った理由が分からない。