ケータイ小説 『肌』 著:マサキ
――女の友情はもろい――
中学生の時、どこかで聞いた言葉。
私とアサミに限ってそんなことはないと、当時は思っていた。
なのに大人になった今では、それが、深くうなずける言葉になっている。
鈍感なフリをして、アサミは鋭い。
彼女を避け始めた頃、アサミは何も気付かない風を装い、しつこく私に話しかけてきたけど、結局、彼女は私から離れていった。
アサミに何を訊(き)かれても、当たりさわりない言葉しか返さなかった私。
遊ぼうと誘われても、ウソだと分かる理由で断り続けたから当然だ。
大学に入学した時は、アサミやマサキと笑い合いながらくぐった正門。
今は互いに、違う友達と通り過ぎている。
ここ数年、アサミとは単なる顔見知り程度の関係になってしまった。
もう、一生、彼女とは昔のように笑い合ったり、悩み事を打ち明け合うことなどないだろう。
そう思っていたからこそ、アサミから電話がきた瞬間、私は石像のように硬直してしまった。
サクと別れ、誰もいない自宅に帰り、ダイニングでオレンジジュース片手にポテトチップを立ち食いしていると、カバンの中のケータイが着信を知らせた。
マサキが好きだと言っていた曲が、大音量で流れる。
高校時代を思い出させてくれる、せつなくも愛おしい気持ちになるメロディー……。
出るか、出ないか。
指先についたポテトチップの塩と油分をウェットティッシュで拭き取る一方、それ以外の体の動きは停止していた。
迷った末に、電話に出ることにした。
先日、帰り道で見かけたマサキらしき人の姿が脳裏によぎり、それが「電話に出るべきだ!」という警告に思えて……。