ケータイ小説 『肌』 著:マサキ
慣れない読書に目が疲れ、眠気に負けそうになった時、普段から本を読む習慣を身につけておけば良かったと後悔した。
太陽が南を過ぎ、外から聞こえるセミの大合唱がボリューム大になった頃。
意識がもうろうとする頭で、最終章の1ページ目を読んだ。
《俺は、Mと関わらない方が良かったのかもしれない。
そうすれば、お互い傷つかずに済んだし、少なくとも、Mは俺以外の男と幸せになっていただろう。
別れてからも、Mのことが恋しかった。
電車の中、見知らぬ女性をMと見間違う日々に泣いた。
Mの肌に、触れたい夜があった。
仕事でつらい時、Mとつないだ手のぬくもりを思い出していた。
腹が減ると、微妙に失敗した彼女の手料理を口にしたくなる。
出勤する時や出張先。
無邪気な高校生の姿を見ると、俺は、ほほえましくも悲しい気持ちにおそわれた。
Mと過ごした高校生活が懐かしくて、視界が歪む……。》