ケータイ小説 『肌』 著:マサキ
アサミ。どうしてそんなに悲しそうな顔をしてるの?
昼間会った時の元気さがない。
私はなんとなく不安になり、明るく振る舞うことにした。
「目ェ赤い? 今まで、目覚ましかけずに寝ちゃっててさ。
約束の時間、思いっきり過ぎてるね。
待たせてごめんね。
アサミは、あの後ちゃんと眠れた?」
「……ううん。マサキの小説読んでたから、寝てない」
アサミはうつむき、暗い顔をする。
彼女の顔がやけに疲れて見えるのは、外が暗いせいではない……。
「アサミも読んでたんだ。
私も気になって半分以上読んだけど、最終章に入ってすぐ眠くなってさ」
「じゃあミオは、まだ全部読んでないんだ……?」
アサミは探るような目つきで尋ねてきた。
まるで、母親へのおねだりをためらい、なかなか言い出せないでいる子供みたいな表情である。
「うん。まだ。
最終章は、帰ったら読もうかなって。
にしても、不思議な気分だよね。
知り合いがケータイ小説書いてる上に、それが本になって全国で販売されてるなんて。
今さらかもしれないけど、私までドキドキしてきた」