僕は自分がどれだけ幸せかを知らない
「お待たせー。」
期待しすぎていた。
「行こうか。」
初詣と言ったら浴衣だと思っていた。
島井さんは普通の服装だ。
僕は普通にカジュアルなのを選んでるんだけど。
目的地は手国神社。
ちょっとした山の頂上にあるその神社は、日の出を見るのに絶好の位置にある。…らしい。
「なぁ島井…マジに歩きで行くのか?」
「当たり前だのくらっか~!!」
何だ?
島井さんの顔が赤いし…島井さんらしくない!!
「もしかして…酔ってる?」
「いえーす!いえーす!!あそこがいえーっす!」
自宅を指差す島井さん。
「島井…帰ろう。」
「断るね!」
いつもと違う!違いすぎる!!
こんなに明るくても島井さん…可愛すぎだろう!!
「帰れよ!」
「いーやーだっ!」
ガキかよ…。
もう昼に相手してきたぜ?
「ダメでしょう?そんなに酔ってちゃあ。」
「お酒飲んだんだもん。そりゃあ酔いますわな。」
違うわーーー!!
そこを責めたわけじゃない!!
「酔ってちゃ山なんて登れませんよ!」
「酔っててもそこに山があるから登ってみせるぅ!!」
酔うと可愛いけどウザイ。
「そんな登山趣味無いでしょう。」
「そーそー。」
「ならなんで…とりあえず今日は無理です。帰りましょう。」
「やーーーー!!」
反抗期のガキだ!?
って…ここ誰かに見られたら僕犯罪者になりそう。
冤罪だ。痴漢じゃない。
それでも僕はやってない!!
「やらもん…行くもん…。」
呂律も回らなくなってきている。
「私…日の出見る。見たい。マストだもん…はぶトゥだもん。しなければにゃらないもん…」
「島井…?」
島井さんは…目に涙をためている。
「そんなに行きたいの?」
「うにゃ…!」
うなずいた島井さん。
「僕の自転車に乗って、そこに置いてる。」
「二人乗りは犯罪?」
「そうだけど…特例ってことで。」
「すぺしぁる…。かっけ~。」
了承を得たようだ。
坂道を後ろに島井さん乗せて…か…。
きついな…。
でも…頑張れそうな気がする。
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