僕は自分がどれだけ幸せかを知らない
問七、末吉は吉より良いのか
僕が大きく振りかぶって…投げた!!
ちゃりん♪
と小銭の音がして、賽銭箱に僕の投げた十円玉が入る。
「静かにしなさい。」
下手投げで十円玉を投げ込むのは島井さん。
注意された…。
「すみません。」
正しい方法は良く知らないので、適当にする。
両手を二度ぶつけて音を鳴らす。拍手とは呼ばないらしい。
一礼。
心の中で願う。
一つ、受験受かりますように…!
二つ、家族全員が健康で一年を過ごせますように。
三つ、島井さんと仲良くなれますように!
十円だけで贅沢かもしれないが、おまけにもう一つ。
四つ、サッカーがうまくなりますように。
コレは自力で叶える夢だな。
「おみくじする?」
「いいよ。」
一回五十円のおみくじ。
「よっ!っと?」
僕が気合を入れてクジを引くのを見て、
「てやっ!」
島井さんも気合でクジを引いた。
紙を開いて、運勢チェック。
『大凶』の二文字。
おいおいおい…今の僕は大吉レベルだと思ったんだがな…。
下の方に書いてある、学業やら何やらの方を見る。
『学業』…努力は報われる。努力なくして成功は無い。
とりあえず頑張ればいいってことか。
そして一番大事な…
『恋愛』…待て、今が時ではない。その時を待て。
…?
今はまだ告白とかするなってことか?
しないよ。
ってか出来ないよ。
意気地なしの僕だもの。
「どうだった?片町君。」
「大凶だった。」
「あら不吉。まあ片町君なら心配要らないわね。」
「なんで?」
「毎日頑張っているもん。指にタコが出来るほどに…ね?」
手を見ると、ホントにタコが出来ていた。
気付かなかった。
「島井は?」
「末吉。」
「末吉?」
「末吉。吉とどっちがいいんだろう?」
「知らないね。」
「知らなかったの?」
知っていると思っていたの?
「サッカーのことならわかるんだけどね。」
「サッカーオタク。」
「否定できない…!!」
アニメのオタクよりはマシだと思う…。
マシだよね?
「そういえば、どこの高校に進学希望したの?」
「星藍…。」
「私と同じ?」
「推薦じゃないけどね。」
「嬉しいよ、1人だけじゃ不安だった。」
島井さんにもやっぱりそういう感情はあったんだ。
「じゃあ星藍行ったらサッカー部に入るんだよね?」
「その道しか考えられないね。」
「じゃあ私もまたサッカー部のマネージャーになろう。」
「え?」
「だって星藍は何かの部活に入ってなきゃダメだよ?」
「ああ、そうだよね。」
そうと知ったら俄然やる気が出てくる。
「じゃあ帰ったら勉強しようかな。」
「学校が始まったら放課後に教えたりしてあげるよ。私は推薦だから。」
受験まであと三ヶ月、やる気は増え続ける一行です。
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