僕は自分がどれだけ幸せかを知らない
「きっつ!!…ぃわぁーー!」
外周が終わり、水分補給。先輩が砕けた雰囲気で言う。
「お先にどうぞ。」
チューペットを差し出す。僕は後輩だからね。
「センキュ♪でもな、そんなに気を使わなくてもいいぜ。」
「そうだそうだ。こっちはそんなに偉くねぇよ。」
「こそばゆいぜ!」
そういうものなのだろうか。
「何ならタメ口でもいい。」
会話に入ってきたのは椎名先輩。キャプテンだ。
「えっ?でもそれは流石に…。」
「キャプテン命令だ。タメ口で行け。」
「いいんですか?」
「もう命令破ったぞ。罰としてちょっとこっち来い。」
「そんなっ!って、ちょ!おわっ!?」
耳を引っ張られて、グラウンドからは蔭になる場所につれてこられた。
何人かの先輩もついてきている。
「どうかしたんですか?」
島井ぃぃ!!
HELP!!拉致されるぅぅぅ!!
「あ、マネージャーは監督手伝ってあげて。」
「はーい。」
すたすたと歩き去る島井。
「よぉし。じゃあ単刀直入に聞こう。」
「何を…ですか?」
「タメ!」
「…何のこと?」
「それでいい。星藍学園サッカー部で今もっとも不思議な謎!!」
何ソレ?
椎名先輩のイメージが…崩れる。
七不思議とか最近は聞かないのに…。
「お前…洒冴は島井と付き合ってるのか?」
「はい?」
「やっぱりかぁ!!」
「え?いや、ちょっと。何?僕が?島井と?」
「付き合ってるんだろ?」
「え?」
「だって見てんだよ?毎日一緒に帰って。レギュラーとマネージャー。同じ中学出身。証拠はコレだけそろってるんだ。」
平坂先輩が言う。
「えぇ?」
「どーなんだ?」
どーなんだろう?
春休みに練習に付き合ってくれたり。
そういえば正月は一緒に過ごしたし。
付き合えているのだろうか。
「返答によっては…。」
ぽきぽき。と指の骨を鳴らす平坂先輩。
…殺されるの?
こういうとき、なんと言えばいいのでしょーか?
教えて!『にほんごであそぼ』のお坊さんっぽい人!!
ってか今度映画見に行く約束もしてるし。
僕のイメージではもう付き合ってる男女のそれと酷似している。
イエスと…答えてもいいのかもしれない。
「…Yes…?」
「ほーかほーか!お前がなぁ!!」
ガハガハ笑う平坂先輩。
「頑張りなさいね。」
椎名先輩まで…。
「島井と付き合えるって…お前凄いんだな。」
「素直先輩…。」
「いや、確かに島井は可愛いよ。可愛いけど…こう…感情が感じられないっていうか…。」
「可愛げが無い?」
平坂先輩。
「そうかな?結構いい子だよ?」
椎名先輩!!
「だってあまり笑わねぇし…。むしろ平坂先輩の怒号が効かないなんて怪奇ッスよ。」
「そこまで…。」
「島井のどこがいいんだ?」
「え?」
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