僕は自分がどれだけ幸せかを知らない

「付き合ってるんだから理由くらいあるだろ？」
椎名先輩が真剣な表情で問い詰めてくる。
「お前ならその気になれば彼女くらい選べるはずだ。島井を選んだのには理由があるんだろ。」
お前なら…って。椎名先輩が本気出したら全校の半分の女子と付き合えますよ。
その時間があればの話だけれども。
「えぇー…。好きだから？」
「ほぉう。」
何スか？素直先輩。
「…。」
平塚先輩は何顔真っ赤にしてんですか！？
こっちまで恥ずかしくなります！！
「何で好きなんだ？」
だからなんで椎名先輩は僕にこだわるの？
「理由くらいあるだろ？」
「…。」
「どこがいいんだ？」
「…。」
「なあ、おい。聞かせてくれよ。」
「…ょ。」
もう、我慢の限界だよ。
出力リミッター解除。フルパワー！！
「っせぇんだよぉ！！しらねぇよぉ！！気付いたら好きになってたんだからよぉ！！」
はぁはぁはぁ…小声で叫んだ。
だって…ほら？アレじゃん？
恥ずいじゃん？
「あースマン。あ、もうちょっと休んでていいぞ。」
椎名先輩はきびすを返して監督のもとへと走っていった。
なんだってんだ？てやんでぇ。べーろーめー。
江戸っ子口調のテンションになってしまったじゃないか。
「片町。」
平坂先輩に呼ばれたので、体の向きを変え正面から向き合う。
殴るんだろう？
『先輩になんて口聞いてんだぁ！？』とか言って。
「ちょっと話、いいか？」
「てやんでぇ！！」
あ、つい条件反射。
「あ、はい。なんですか？」
間髪いれずにやり直す。
「あ？あぁ。椎名のことなんだ。」
え？何？足に怪我してて選手生命の危機とか？
何ソレスポーツ漫画？
「椎名はな…その…なんだ。今まで一度も同年代の女性に好意を持ったことが無いんだ。」
「同性愛…ですね。」
と、素直先輩。
ぼかっ！！
と流星パンチの平坂先輩。
「んなわけ無いだろ。まぁ、椎名は恋心に興味はあるんだが恋に興味が無いんだ。」
「どういうことですか？」
「洒冴、そんなのは決まっているだろう。」
「どういうことなんです？素直先輩。」
「彼女いない歴＝年齢！！」
あー僕はそれだ。
だってさっき付き合ってるって言ったのは希望だもん。
「素直、お前もだろうが。」
「平坂先輩だってー。」
「オレにはいる。」
「へ？」
「いるんだっつーの。」
ゴン！！
流星パンチ！！
「まあ簡単に言ったらな、椎名先輩はロリコンということなのさ。」
素直先輩はしばらく無視する。
平坂先輩とアイコンタクト。
「椎名はな、小学生のころから由比子姉さんのことが好きらしいのさ。」
「由比子姉さん？」
「椎名の従姉にあたる人だ。そりゃあもう優しくて綺麗で美人で可愛くて若くて…。」
「ぶっちゃけ何歳ッスか？」
素直先輩はそこが気になる様子だ。
「25。」
「8歳差ァァァッ！？」
「そうなるな。」