僕は自分がどれだけ幸せかを知らない
「おぉぉぉぉぉーー!スゲぇーーー!!」
「超!!超!!興!!」
意味わからない歓声。
何のことは無い。
リフィティングで技を見せただけだ。
「流石兄ちゃん!少し顔が良くて、根気良くサッカー続けてると思ってたら…。」
妹よ、そんなに心配してたのか?
「兄ちゃん…サッカーできたのね…。」
オヨヨ…と、涙を拭く仕草をする妹。
「一応中学時代のエースだぞ?」
「おぉ!?エース!?ウルトラマンなのか!?」
「超!超!超人!!」
二文字に増えた?
「仁木!!行くぞ!!」
「了!未来!!」
何だ?何をする気だ?
合体必殺技?
仁木がボールを未来へと投げる。
下手投げで蹴りやすいボールだ。
「必殺!」
「だいれくとぼれーしゅーと!!」
「ゲボァ!?」
みぞおちに直撃弾!!
痛い…痛いよぉ…!お母さぁぁん!!
「お…お前ら…!」
「コンビネーションアタックだぁ!!」
「必殺…。」
「洒冴、俺たちも特訓したんだぜ!ボレーは極めた!!」
「極み。」
奴等…サッカーで人殺すんと違うか?

「zzz…」
「夢…」
「寝顔は可愛いねー。」
奴等が眠り、朝日レベルの笑顔が溶鉱炉レベルの寝顔に変貌した。
「そうだな。」
はしゃぎすぎて疲れて眠った。
少しだけ永眠して欲しいと思う。
「はぁー…。子守って大変。」
「お前はただ見てて笑ってただけだろ。」
子守はほとんど僕がした。
奴等の攻撃力は半端無い。
「幸せな家族のお母さんのポジションだよ♪」
死ねよ。お母さん。不慮の事故で。
「僕がお父さんか?」
「ううん、遊びに来た親戚のおじさん。」
何だそのポジションは?
金出して子供におもちゃを買ってあげるようなポジションじゃないのか?
「何でだよ?」
「真実はいつも一つ!」
「応答しろよ。」
「兄妹は結婚できないから♪」
「たとえ話でそこでリアリティー持ってくるか…。」
「お兄ちゃん。」
トントンと、腕を叩く妹。
「あ?」
「じ・か・ん。」
腕時計を見ると、時刻5時。もちろん午後。
「そろそろ行くか…。」
「ちゃんと着替えて、防寒もしっかり。」
「わかってる。ガキ共は任せたぞ。」
着替えを済ませる。
「母さん、行ってきまーす。」
「洒冴…コレ。軍資金。」
「センキュ。」
それでは、冒険の旅へと出発しましょう。
目指すは姫君の待つ城。
島井家だ。
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