The world is changed story
「俺はクラルテ。後さ、敬語、なしにできる?」
着替えが終わったのか、衣擦れの音が聞こえなくなった。
かわりに、足音が近づいてくる。
人との距離を保つため、自然と使ってしまう敬語。
それをなしにしたら、どうなるんだろう。
5年間、独りで生きてきた。
寂しかったけど、甘えられる人もいなかった。
だからって、今日知り合ったばっかりの人には甘えられない。
…どうしよう。
「なにか手伝おうか?」
言葉を返してもいないのに、言葉を投げてくれる。
私にはそれぐらいの方が丁度いい。
この人、人と話すの慣れてるんだなって思った。
「じゃあ、お湯を沸かして、ください。」
一瞬こっちをチラッと見られた気がするけど、
気付かないふりをして、料理を進める。
お腹がすいたから、すぐにできるものを作る。
お湯が湧いて少し経って、料理ができあがった。
それに調味料を少しかければ、良いにおいが漂ってきた。
「お湯、どうする?」
私の好きな葉をお湯に通し、お茶を作る。
その様子を、興味深そうにクラルテは見ていた。