コンプレックス
「仕事はもうとっくのとっくに終わりました!それに、別に泣いてません!」
「うそつけ。頬に黒い線ができてるぞ、ひどい顔」
「ええっ…」
「もう、いいからどけ!俺も今からそこまで出張だ~」
彼は大荷物を抱え、歩いて表へ出ていった。
相変わらず無愛想。おまけに…失礼な!
「名前…なんていうんだろ?」
「タケルよ」
「きゃあっ!!」
びっくりした…
後ろからいきなり低い声が…
振り向くと化粧のどギツイお…じさん!?
「た…タケルさんですか…」
「あなた誰?」
「私は…この前あの人…タケルさんに無くしたお財布を届けてもらったり…」
「まぁそうなの!あの子根は優しいからねぇ」
「は、はぁ…」
「ここ、タケルちゃんに教えてもらったの?」
「いいえ、偶然です!ここでちょっと休憩してたら彼がドアから…」
「まぁ、ステキ!」
「…は?」
「そんなねぇ、名前も知らない彼と偶然こんな路地裏で再会するなんて、運命よ!」