コンプレックス

「あ、これだ」



返事をする間もなくタケルはバスに乗り込んだ。



「あ…タケル…!」



バスを見上げるとタケルは窓を開け、こっちを見ていた。



「ぼーっとしてるとまた財布落とすぞ」

「私、あのっ…タケルと一緒にはローズに帰らない!」

「……………」

「ここでひとり旅を完了して、タケルの帰りをローズで待ってる!」

「…大丈夫か?」

「うん…!帰ってきたらおいしい南国料理食べさせて」

「……わかった」

「…心配しないで!」

「してねぇよ。期待して待っとけよ」

「うん!」




バスは出発した。






「…よし。私も克服旅行頑張るぞ」



とは言え…



ああ…ひとり…だ。



「……………」



結局、今までも克服に至らなかったのは、トラウマのせいで意固地になってたから…。

ひとりがいい!…なんて、今は思わない。

タケルが…


タケルに出会ってから…





「……私も克服する必要ないや!」



…タケルがいてくれるから!





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