コンプレックス
「あの~…何言ってるんですか?」
「だってね~、女の子とあんなに喋るタケルちゃん、珍しいんだから」
「じじぃ!何ベラベラ喋ってんだよ!」
タケル…さんが戻ってきた。
「ひどいっ!じじぃって言わないでよーーー…」
おじさんを店の中に押し込みながら彼も入っていった。
もう…出てこないか。
おじさんがヘンなこと言うからなんか私も動揺していた。
私だって、あんなに男と喋れるのは、そうあることじゃない…。
ここは一体…
「あ」
「まだいたのか。営業の邪魔だ、帰れ」
「あのっ私…お客です!」
「…本気か?ここオカマバーだぞ」
「えっ…本気よ」
「じゃあ…表からどうぞ」
こういうお店に来る予定は全くなかったんだけど…成り行きというか…なんかこのまま帰りたくなくて。
最初は緊張したけど、案外楽しく過ごせたのだった。
「ユカちゃ~ん、また来てね~」
「はーい」
「夜道の女の子ひとり歩きは危ないわ!タケルちゃん、送ってあげなさい!」