コンプレックス
「へへ…そうですか?」
「やっぱり女の子ねぇ~」
「あ、でも私お店に出るのはちょっと…」
「わかってるわ。私たちだって本物の女の子がいたらや~よ。ははははは」
「はは…ははは…」
そう。ここはあの時のオカマバー。
あれから途方に暮れ、辿り着いたのはここだった。
逃げ出したはいいものの、持ち物といったらその日の鞄だけ。どこかに泊まるお金もない、さっちゃん以外のアテもない…。
外を出歩けば加藤じゃなくても男の人が当然いる…
恐い…!
早くどこかに逃げ込みたかった。
ついこの間までひとり旅を満喫していたなんて…自分で信じられない。
そもそもそのひとり旅に出ていたのも、そんな自分を克服するためだったんだけど…
ここに来て、事情を話したら快く居ていいって言ってくれた。
若干1名、快くない人もいるけど…
「女は嫌いだ」
「また言ってる」
「…なんでここに来たんだよ?ここ男だらけじゃねぇか」