コンプレックス
「は?そんな人…結構いるぞ?」
「んー…なんかキョロキョロ捜してるような感じの人は?」
「……いや。そんな感じの人はいない」
「そう…」
それを聞いて、私はビルの隙間から出た。
「ったく人騒がせな。一体どうしたってこんなとこに入ったんだ?」
「あの人が…加藤まさるが現れたの」
「え、あの見合いの…?なんでこんなとこに?」
「…わかんないけど、何か捜してる様子だった…私慌てて隠れたらこうなって…」
「そっか…。あ、靴…俺近くで買ってくる」
「あ…いい!」
「遠慮すんな今さら」
「ちがう…あの…行かないで…」
「…………」
「今…ひとりにしないで…」
こんなこと、私あんまり言わないんだけど…
「…じゃこれ履け」
タケルは自分の靴を脱いで、私に渡した。
「あ、そんなっ、私裸足でいいから!」
「早くしないと置いてくぞ!」
「あっ待って…!」
タケル…。
…ぶかぶかだ。