コンプレックス
「尾上ユカさん。これですか?」
「あ…これです、なんで…?」
「ついさっき届け出があったんですよ。中に免許証が入っていたので、確かにあなたのものですね?」
「あ…よかったぁ…。これで払えます!タクシーの運転手さんは?」
「あなたへの痴漢容疑で取り調べを受けています」
「え…、あ…それはもう…。ごめんなさい、私がちょっと大袈裟だったかもしれません…」
なんとか全て解決した。やっと自由になれる…!
「尾上さん、あの方が届けてくれたんですよ」
「あ、そうですか、お礼言ってきます!」
その人はもう帰るところだった。
「あのっ、ありがとうございました!お財布…あ」
その人は…飛行機で隣だったあの無愛想な男だった。
なんて偶然…。
「あの…これどこに?」
彼は何も答えなかった。
まさか…
この人飛行機の中で掏ったんじゃ!?