コンプレックス
「いけないことだってわかってるんだけどどうにもやってしまって…、だんだんエスカレートしていくのが自分でもわかって、歯止めがこれ以上きかなくなる前に…自分から逃げたの。もう夫を傷つけたくなかったし、自分も……」
「……………」
「…という私のヒストリー」
かおりさんは涙を浮かべながら笑ってた。
「ひいたでしょ」
「そんなこと…ない…」
「ははは、大丈夫。今はもう落ち着いてるから。ここに来て海に癒されるんだー…。あ、あなたたち行くとこなかったらしばらくここ使っていいよ」
「…でも」
「ここに辿り着いたのも何かの縁だよ。遠慮しないで。ねぇ!…って、タケルくんは?」
「あれ…?」
いつのまにかタケルの姿はそこになかった。
「じゃ私、早朝に帰るから寝るね。おやすみっ」
「おやすみなさい」
かおりさんはベッドに横になるなりすぐさま寝息をたてている。…なんて寝付きがいいんだ。
私はかおりさんのご好意に甘えさせてもらうことにした。