コンプレックス

「あの…」



彼は…逃げた。



「あ、ちょっと!」



やっぱり!私をなめんなよ、これでも陸上選手に選ばれたことあるんだから!



ほーら、捕まえた…



「うわぁ触んな!」

「盗ったんでしょ、飛行機の中で!だから途中で席立ったんでしょ!」

「はぁ!?ふざけんな!」

「じゃあなんで!?」

「うちの近所に落ちてたんだよ!席を立ったのは…女が嫌いだからだ!」



あ…



私ってば…




「待って!」

「まだ疑ってんのかよ!?」

「ごめんなさい!」

「……………」

「お財布拾ってくれたのに疑ったりして…それに…」

「…それ以上言うな」

「わた…私もなの!その…男の人が苦手で…」

「じゃ早いとこ解散だ。じゃあな」



そうなんだけど…

一刻も早く男という物体から離れたいんだけど…



「…待って!」

「…なんだよ!?」




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