流浪少女
少女フィナ
1
街の大通りに建ち並ぶ店の一角に、“ナマイ”という名の洋食屋があった。
特に流行っているわけでもない、店内も至ってシンプルな造りの普通の洋食屋だ。
唯一の売りは、厨房内を見られる席が三ヵ所用意している事。
席に腰を下ろすと、壁際には丁度頭から肩の高さ程の横長の窓が取り付けられており、その向こう側が厨房。
それが、入口から向かって手前に一つと中央に一つ、奥に一つ備え付けられていて、料理を造っている様子を楽しめるというわけだ。
日没後、大柄な男性と背の高い男性が一緒に入店した。
仕事を終えた後だったからか少し疲れた表情を浮かべて、厨房が見える中央の席へと向かったのだが……そこに座っていた十代前半と見られる幼い少女と十代後半――十七、八くらいの少年の二人組の姿を見た大柄の男性が、いきなり怒鳴った。
「てめぇら、そこは俺達の特等席だ!知ってて座ってんのか!?」
周囲のざわめきが一瞬にして止まり、視線が集まる。
「いや、知らなかった。すまなかったな」
席に座っていた少女が言い、しかし席を立とうとはせずに厨房を真剣に見つめていた。
「今!今の見たか?フライパンから火が上がった!」
はしゃぐ少女に、少年が微笑んで言葉を返す。
「はい、凄いですね」
大柄の男性は、無視をされたと思って更に腹立たせた。
「そこは、俺達の特等席だ!」
ようやく少年が立ち上がり、向き直って軽く溜め息をつく。
「すみませんが、ここの席は誰でも座れると、お店の方にお聞きしました。
貴方達の特等席というのは、貴方達が勝手に決めていたのではないですか?」
「ぐぅ……っ」
特に流行っているわけでもない、店内も至ってシンプルな造りの普通の洋食屋だ。
唯一の売りは、厨房内を見られる席が三ヵ所用意している事。
席に腰を下ろすと、壁際には丁度頭から肩の高さ程の横長の窓が取り付けられており、その向こう側が厨房。
それが、入口から向かって手前に一つと中央に一つ、奥に一つ備え付けられていて、料理を造っている様子を楽しめるというわけだ。
日没後、大柄な男性と背の高い男性が一緒に入店した。
仕事を終えた後だったからか少し疲れた表情を浮かべて、厨房が見える中央の席へと向かったのだが……そこに座っていた十代前半と見られる幼い少女と十代後半――十七、八くらいの少年の二人組の姿を見た大柄の男性が、いきなり怒鳴った。
「てめぇら、そこは俺達の特等席だ!知ってて座ってんのか!?」
周囲のざわめきが一瞬にして止まり、視線が集まる。
「いや、知らなかった。すまなかったな」
席に座っていた少女が言い、しかし席を立とうとはせずに厨房を真剣に見つめていた。
「今!今の見たか?フライパンから火が上がった!」
はしゃぐ少女に、少年が微笑んで言葉を返す。
「はい、凄いですね」
大柄の男性は、無視をされたと思って更に腹立たせた。
「そこは、俺達の特等席だ!」
ようやく少年が立ち上がり、向き直って軽く溜め息をつく。
「すみませんが、ここの席は誰でも座れると、お店の方にお聞きしました。
貴方達の特等席というのは、貴方達が勝手に決めていたのではないですか?」
「ぐぅ……っ」