流浪少女

とても暗い、闇の中。

気が付くと、そこに居た。

屋敷の二階から落ちたのだから、ここは一階。

辺りを見回してみるが、微かな明かりさえも見当たらない。

上を見上げると、そこには“落ちた穴”があるはずなのだが、やはり暗くて見えない。


ペンライトではなく、カンテラを買ってもらうべきか……

しかし、先程のように落としてしまっては同じ事だな。


少女は、立ち上がろうとして右足首に響く激痛に蹲った。

「痛……っ」

どうやら、落ちた時に挫いてしまったようだ。


参ったな。

この様な所に一人とは。


少女が落ちたのは、ここに人の声が聞こえた気がしたからだった。

もう一度辺りを見回し、深呼吸をする。

「誰か、いないのか?」

呼び掛けて、反応を待ってみる。

辺りは静まり返っていて、風の音や虫の音色さえも聞こえない。

反応は、返っては来なかった。

やはり落ちる前に聞こえたのは、幻聴だったのか。

溜め息をついて、諦めようとしたその時、微かに女性の声が聞こえた。


「誰か居るのか!?」

「……」

やはり、誰か居る。

声が小さくて、何を言っているかまでは聞き取れないが、こちらの言葉にはちゃんと返してくれているようだった。

「すまないが、明かりがあったら付けてはもらえないだろうか?」

「……」

微かに衣擦れの音がして、カチっという音と共に周囲が明るくなった。

「うわ」

暗闇に目が慣れてしまっていたらしく、眩しさで思わず片腕で両目を庇う。
どうにか目を開けられるようになると、すぐ目の前に人の足があるのに気が付いた。

白くて細くて、形の整った足だ。

上へ辿って行くと―…

「眩しい!」

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