流浪少女
目の前の人物が持つカンテラの明かりが、少女の顔に直撃した。

「あ、すみません!」

再びカチっという音が鳴って、ようやく付いたカンテラの明かりは消えてしまった。

辺りは暗闇。

「―…お前、加減というものを知らないのか?」

「加減、ですか?」

女性の頭の中に、クエスチョンマークが浮かんでいるのが想像出来てしまう。

今まで緊張していた肩の力が、一気に抜けてしまった。

「カンテラの明かりを付けて、床に置いてくれ」

「は、はい」

カチっという音と共にカンテラ明かりが付けられて、それを床に置く。

明かりは、また消えてしまった。

「な、何で……」

女性が持っていたカンテラは旧式で、傘の形をしていたのだ。

付いている電球は、傘の中にすっぽりと治まる。

その為、床に置くと、明かりは消えてしまうのだった。

「何故そのようなカンテラを持っているのだ!」

「す、すみませんっ」



*** ***



深く、深く溜め息を吐く。
カンテラは、椅子の背に引っ掛けて、どうにか落ち着く事が出来た。

「では、改めて」

コホンと軽く咳払いをする。

「私の名は、フィナと言う。お前は?」

「私は、ユキと申します」

少女――フィナの目の前にいるユキと名乗った女性は、黒のスカートに服、その上には、フリフリの白いエプロンを付けていて、この様な大きな屋敷には普通に居るであろうメイドの格好をしていた。

しかし、屋敷が廃墟となった今、何故ユキはこの場所に止どまっているのだろうか。

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