流浪少女

またある日の事です。


若者は、花を楽しみに来るロボットに、思い切って声を掛けてみる事にしました。


『お前、名前は?』


花を見つめていたロボットは驚いて振り返ります。


若者から声を掛ける事なんて、今まで無かったからです。


『名前は、ありません。私は、この屋敷を世話するロボットですから』


『だったら、名前を付けてやろう。お前の名前は、ユキだ』


ユキ――


そう名付けられたロボットは、とても喜びました。



その日から、若者は外へ外出するようになりました。


閉ざしていた心も、少しずつ開いていきました。


『ユキが喜ぶ顔をもっと見たい』


その為に、花束を買いに、外へ出ていたのです。


『ユキ、私が帰ったら、一番にお前に出迎えて欲しい。その度に、私はユキに花束を贈ろう』


『かしこまりました、ご主人様』


いつしか、若者はユキを大事に思うようになり――


ユキもまた、若者を慕うようになったのです。



*** ***


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