流浪少女
またある日の事です。
若者は、花を楽しみに来るロボットに、思い切って声を掛けてみる事にしました。
『お前、名前は?』
花を見つめていたロボットは驚いて振り返ります。
若者から声を掛ける事なんて、今まで無かったからです。
『名前は、ありません。私は、この屋敷を世話するロボットですから』
『だったら、名前を付けてやろう。お前の名前は、ユキだ』
ユキ――
そう名付けられたロボットは、とても喜びました。
その日から、若者は外へ外出するようになりました。
閉ざしていた心も、少しずつ開いていきました。
『ユキが喜ぶ顔をもっと見たい』
その為に、花束を買いに、外へ出ていたのです。
『ユキ、私が帰ったら、一番にお前に出迎えて欲しい。その度に、私はユキに花束を贈ろう』
『かしこまりました、ご主人様』
いつしか、若者はユキを大事に思うようになり――
ユキもまた、若者を慕うようになったのです。
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