流浪少女
「そうか、ティスはこの屋敷の主だったのだな?」
「ち、違いますよお嬢様、何を言ってるんですか。このぬいぐるみは、途中から道案内として付いて来て下さったんです」
「ほう。不思議なぬいぐるみだな」
ティスは、軽く咳払いをした後、改めて目の前の女性に向き直った。
女性は、不安そうな表情でティスの言葉を待っていた。
「君が、ユキさんですね」
「はい」
「探しておりました。貴女のご主人様であるファスト・ディダ様より、伝言がございます」
「―…はい」
「私は、長い長い旅に出る。ここに帰って来る事は無いかもしれない。
だから、ユキも旅をすると良い。
外に出て、色々な物を見て、感じて、体験して欲しい。
君が幸せである事を祈っているよ――と」
「ご主人、様……」
瞳を閉じてみる。
小さく呼ぶと、ご主人様の微笑む顔が瞼に浮かぶような、そんな気がした。
「それがご主人様のご希望でしたら、従いましょう」
「ユキ、それで良いのか?」
心配気な表情で問いただしたのは、ユキの隣に居るフィナだった。
「だってユキは、あんなに主人が帰る事を信じていたではないか。信じて、疑わなかったのだぞ?
主人も主人だ。ユキを独りにしておいて、勝手に旅に出るなど……!」
フィナの心配は、次第にユキの主人への不満に変わっていった。
「フィナお嬢様」
ユキの一途さを知っているからこそ、フィナは主人に対して怒らずにはいられないのだろう。
それは予測がつく。
――だが、ティスは首を横に振って、言葉の続きを制した。
これ以上の言葉は、きっとユキの主人に辛い思いをさせてしまうから。
「ならば、ユキ。私達が泊まっている宿に来るか?旅立つのは明日にして、今夜をそこで一緒に過ごすのはどうだ?
もし、愚痴があるのなら、聞く事なら出来るし」
「フィナ様、ありがとうございます。ですが、私はここで過ごす事にします。
ここは、思い出がたくさん詰まった場所ですから、心の整理もしたいですし」
「そうか……解った」
「ち、違いますよお嬢様、何を言ってるんですか。このぬいぐるみは、途中から道案内として付いて来て下さったんです」
「ほう。不思議なぬいぐるみだな」
ティスは、軽く咳払いをした後、改めて目の前の女性に向き直った。
女性は、不安そうな表情でティスの言葉を待っていた。
「君が、ユキさんですね」
「はい」
「探しておりました。貴女のご主人様であるファスト・ディダ様より、伝言がございます」
「―…はい」
「私は、長い長い旅に出る。ここに帰って来る事は無いかもしれない。
だから、ユキも旅をすると良い。
外に出て、色々な物を見て、感じて、体験して欲しい。
君が幸せである事を祈っているよ――と」
「ご主人、様……」
瞳を閉じてみる。
小さく呼ぶと、ご主人様の微笑む顔が瞼に浮かぶような、そんな気がした。
「それがご主人様のご希望でしたら、従いましょう」
「ユキ、それで良いのか?」
心配気な表情で問いただしたのは、ユキの隣に居るフィナだった。
「だってユキは、あんなに主人が帰る事を信じていたではないか。信じて、疑わなかったのだぞ?
主人も主人だ。ユキを独りにしておいて、勝手に旅に出るなど……!」
フィナの心配は、次第にユキの主人への不満に変わっていった。
「フィナお嬢様」
ユキの一途さを知っているからこそ、フィナは主人に対して怒らずにはいられないのだろう。
それは予測がつく。
――だが、ティスは首を横に振って、言葉の続きを制した。
これ以上の言葉は、きっとユキの主人に辛い思いをさせてしまうから。
「ならば、ユキ。私達が泊まっている宿に来るか?旅立つのは明日にして、今夜をそこで一緒に過ごすのはどうだ?
もし、愚痴があるのなら、聞く事なら出来るし」
「フィナ様、ありがとうございます。ですが、私はここで過ごす事にします。
ここは、思い出がたくさん詰まった場所ですから、心の整理もしたいですし」
「そうか……解った」