流浪少女

日が昇ると、街は次第に人通りが賑やかになってくる。

いつもの活気のある街になるまでは、そう時間も掛からなかった。

昼食を昨日の夜と同じ店で食べて、その店を出たのは午後一時を回ったところ。

食べてる時には現れなかった昨日の夜の男達とは、店を出てすぐの通りでばったりと出会ってしまった。

「廃墟には、行って来たのか?」

長身の男の問いに、フィナが答える。

「行って来たぞ。物音も解決したから、もう大丈夫だ」

「証拠はあるのか?」

「証拠……?」

何者が居るのかを突き止めて、その証拠を持って来る約束をしていた。

しかし、持ち帰った物はティスの腕の傷と、フィナの片足の捻挫だった。

勿論、これでは何の証拠にもならない。

「物音は、ユキというメイドが片付けを失敗して出した音だったぞ」

言うだけ言ってはみたが、やはり言葉では証拠になるはずもない。

長身の男性は、バカにしたように「ハッ」と一笑した。

「あんな廃墟に、メイドなんて居るわけないだろう」

「うむ。普通に考えたら、そうだろうな」


さて、どうしたものか。


フィナは、後ろ頭を掻いて軽く溜息をついた。

その時だった。

後ろから、聞き覚えのある声が聞こえて来たのだ。

「フィナ様!ティス様!」

フィナとティス、そうして、向かい合って話していた男性二人も一緒に声のした方を振り返った。

白い肌に黒髪の女性。

エプロンが特徴的のその人物は、先程話していたメイドだった。

「ユキではないか」

ユキは、大きな荷物を両手一杯に持ち、嬉しそうに駆け寄って来ていた。

「昨晩は、どうもありが……」
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