流浪少女
言い掛けて、通りを歩く人にぶつかり荷物を落とし――

その先は下り坂。

当然落とした荷物は人々に紛れ込んで坂を下っていった。

「きゃあ、待って下さいー!」

ユキの悲鳴が遠ざかって、四人の間には少しの沈黙が下りた。

「ま、まぁ……あれだ。私達は、もうあの席はいらないから」

向き直って言うフィナに続いて、ティスもまた頷いて話に入る。

「そうですね。あの席は、ご自由にお使い下さい」

そう言われた二人組の男性は、驚いたように目を瞬かせた。

「どういう、事だ?あんなに気に入ってたじゃないか」

「まさか、店の料理が気に食わねぇって言うんじゃないだろうな?」

席は譲りたくはないが、気に入った店なら繁盛して欲しいと願うのが、常連の客心。とでも言おうか。

店から客が離れるのは、気に入らないらしい。

しかし、フィナとティスが店から離れるのは、男が言った理由とはまた別の理由があるのだ。

「料理は、とても美味しかったぞ」

「じゃあ、どうしてだ?」

「私達は、旅をしているのだ。だから、もうあの席はいらない」
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