流浪少女
期限は三日。との事だったが、少女は「今すぐに行くと」言い出した。



そんなこんなで洋食屋を後にした二人は、早速街の大通りを見物しながら廃墟がある方へと歩みを進めた。

「ティス、こういうのを肝試しと言うのだろう?」

瞳を輝かせて言う少女に、ティスと呼ばれた少年は頷いた。

「そうですね。怖くは無いのですか?」

「怖い物なのか?初めてだから、今は楽しみでしょうがない」

「そうですか」

少女の様子に、ティスはくすくすと笑う。

「何か、おかしな事を言ったか?」

「いいえ、何も。
ただ、お嬢様が楽しそうにしていらっしゃいますので、俺も、何だか楽しみで」

「そうか」

夜になっても人通りの多いこの街は、ファスティア国の首都であり、貿易が盛んな都市でもある。

その為、見た事もない品が並んでいる店には興味を示し、少女はティスの手を引っ張ってあちこち見て回った。

いくつ目の店だったか、路上でアクセサリーを売っている屋台を見つけて品々を見ていた時、店の人が二人に声を掛けてきた。

「こんな時間に、子供同士で買い物かい?」

二人を見て珍しそうに言う男性の店員に、ティスは軽く咳払いをして言った。

「俺、一応二十歳は超えてるんですけど」

「ああ、これは失礼。
これから何処かに行くのかな?」

悪びれた風でもなく、楽しそうに話す様子に、今度は少女が口を開く。

「うむ。街の奥にあるという廃墟に行くのだ」

「廃墟に!?」

少女の言葉で、店の人の表情がガラッと変わった。

真剣な目で二人を見て、視線を少し落とす。

「悪い事は言わない。あそこへは、行かない方がいい」

「何故だ?」

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