流浪少女
「あそこには、人なんか住んでやしない。今や魔女か……モンスターどもの巣窟になってるって噂だ」

「噂……」

「まぁ、俺も本当の事は知らないがな」

向き直り、視線の先を廃墟のある方角へと移す。

「気味の悪い外観から見ても、危険な事には変わりない」

「危険、なのか」

しかし、それで引き下がる少女ではなかった。

店の人と別れを告げて、二人は再び廃墟のある方角へと向かった。

「この街の人達は、噂に左右されてる様ですね」

「本当に危険な事があったなら、話して聞かせろというのだ!」

「外観から中身を見た気がしてしまうのは、人間の悪い癖なのかもしれませんが……果たして、中身はどうなっているのでしょうね」

ティスは、少女から廃墟のある方角へと視線を向けた。

危険だとも言い切れないが、逆に安全だとも言い切れないのだから、全く不安が無いわけではない。

少女に危険が及んでしまっては、どうしたら良いのか……

そんな考えが表情に出ていたのだろうか、少女がにっこりと微笑みを浮かべて言った。

「なに、心配はいらぬ。いざとなったら、ティスが合気道で助けてくれるのだろ?先程の様に」

先程とは、殴りかかって来たはずの男性が床に倒れた時の事。

ティスは、得意の東方武術である合気道でさらりと受け流したのだ。

「そうですね。危険な輩には、お嬢様に指一本触れさせませんよ」

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